なーるほどー。
なんとか復活して欲しいですねー。
今月6日の台風の大雨で”うらたんざわ渓流釣り場”が甚大な被害を受けたことを聞き、今日昼過ぎから現場を見に行ってきた。 行ってみると、もはや平水で、青い綺麗な水が流れていたが、魚はほとんど居なかった!流されてしまったのだ。川の様相は一変していて、ことに釣り場の下半分の堰き止め部分は岸が削られて川幅が以前の倍近くになっていた。6つ作ってあった橋はすべて流されていた。そして事務所の裏がゴッソリと崖崩れになっていて、事務所も危なかったことがわかった。 この管理釣り場は相模原からも近く、ずいぶんと通い、僕は管理人のご家族全員を知っている。いまは井上克彦君が一人で管理してるようなものだ。彼は40代後半の独身男であり、事務所の四畳半に寝泊まりして自炊している。僕はここに釣りに来ると、帰りにはかならず事務所に寄ってストーブに当たって暖まり、克彦君や親爺さんとおしゃべりする。お茶が出たり、お菓子が出たり、ときには猟でとった猪や鹿をふるまわれたりもした。そんな付き合いもあって、この釣り場の危機を見過ごすことはできない。 現場では克彦君はユンボの整備をしていた。ユンボを動かして川岸をもとの状態にもどす作業を毎日やっていたそうだ。彼は疲れて、かなりまいっていた。 「こんな被害は初めてだし、どうしていいかわからないんですよ。大水は怖かったですよ、ほんとうに死ぬかと思いました。復旧作業をやってるんですが、身体も疲れましたが、精神的ショックが大きいです。相談する人もいないし。もう釣り場をやめて土方でもやろうかと思ったりしているんですよ」と。 僕は話をじっくり聞いたあと、 「どうするかは君が決めることだけど、土方はいつでもできるじゃないか。せっかくここにみんなに愛されている釣り場があるんだから、あせらずに少しずつもとに戻す努力をしてみたら・・・」 と意見を言った。 そのあと、僕は青根にある「癒しの湯」に行った。温泉は人も少なく快適だったが、克彦君のしょげた顔がずっと気になっていた。そこで、食堂のおばさんに聞いてみると焼きおにぎりと鶏の唐揚げなら持ち帰りを用意してくれるという。それを克彦君に届けてあげることにした。 夜も8時になると山中は真っ暗である。ふたたび僕はうらたんざわ渓流釣り場に向かって車を走らせた。釣り場の入り口にある事務所には明かりがついていたが、戸には鍵がかかっていた。まだ現場に居るんだと思い、トンネルの先の降り口に行くと暗い河原の中にユンボのライトが見えた。工事中の凸凹道を降りていくと、闇の中でヘッドライト照らされて彼ともう一人の男が見えた。 「あんまり元気がないからね、まともに食べてないんじゃないかと思ってね。これでも食べな。たいしたもんじゃないけどこれしかなくてね。それと、これは俺の見舞金だ、気持ちだから受け取ってくれ」 といくばくかのお金を渡そうとした。だが彼はお金は決して受け取ろうとはしなかった。 「こっちだけ、旨そうだからいただきます」 と嬉しそうに言う。僕は 「じゃあね、死なない程度にがんばってくれ」 と言って背を向けた。 帰りの山道で、鹿の親子と遭遇した。車から逃げていく二頭の鹿のお尻の白い部分がモコモコと動き、あ、ハートの形をしているんだ、と初めて気がついた。 |