私は、おいの満男は間違ったことをしていないと思います。 第42作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』から 「男はつらいよ」は、第42作『ぼくの伯父さん』から、平成の若者たちの、決してスマートとはいえない生き方を応援する「青春映画」へとシフトしてきました。世は変われども、変わらないのは、若者の悩みでもあります。 この作品から吉岡秀隆さんふんする満男の初恋の人・及川泉役として後藤久美子さんが出演。それまで「男はつらいよ」とは無縁だった若い世代が劇場に駆けつけ、観客動員数も上昇しました。 浪人生の満男は、両親が別居して、名古屋へ転向した泉への想いが募るばかり。勉強も手につかず、両親とけんかして、バイクで家を飛び出します。まるで若いときの寅さんです。 名古屋に着いた満男は、泉の母・礼子(夏木マリ)から、泉が九州の叔母・奥村寿子(檀ふみ)のもとで暮らしていることを聞き、さらにバイクを走らせます。そこに流れるのが徳永英明さんの曲「MYSELF 風になりたい」です。この作品から満男と泉のテーマ曲として徳永さんが挿入歌を担当、それが若い世代の共感を呼ぶこととなります。 両親の離婚に心を痛め、心細い思いをしていた泉にとって、自分に会いに来てくれた満男は頼もしい存在です。偶然、商売で九州を旅していた寅さんも加わり楽しい時間を過ごします。 しかし泉の叔父・奥村嘉一(尾藤イサオ)は、高校の教師をしているカタブツで、浪人生が高校生のめいに会いに来たことに批判的です。満男が帰ったあと、寅さんにチクリとくぎを刺します。そのときの寅さんのことばです。 「私は、おいの満男は間違ったことをしていないと思います。慣れない土地へきて寂しい思いをしているお嬢さんを慰めようと、両親にも内緒で、はるばるオートバイでやって来た満男を、私はむしろよくやったとほめてやりたいと思います」。 ぼくが観た映画館では、ここで拍手が起き、それが劇場に広がりました。教育者の振りかざす正論に対して、寅さんは満男を「ほめてやりたい」と胸を張って擁護します。ここから寅さんは、満男だけでなく、今を生きる若者たちの心のよりどころとなったのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 ちょっと涙腺がゆるみましたね。 |