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第二章 気づかせること 上原の図太さと小川の謙虚さ 活躍する選手には、活躍するだけの理由がある。2013年のメジャーリーグはボストン・レッドソックスが優勝した。そのレッドソックスでクローザーを務めたのが上原浩治である。ワールドシリーズの息詰まる熱戦は、大人のみならず子供たちをも夢中にさせたのではないだろうか。 上原とはアテネ五輪でチームメイトになってからの、旧知の仲だ。技術的にも本当に素晴らしいピッチャーなのだが、上原の図太さに舌を巻いたことがあった。彼が巨人時代のある時、スクイズのサインが出たのだが、バットを出すとのを少しだけ早まってしまった。「スクイズだ」と見抜いた上原はすかさず頭付近に厳しいボールを投げ込んできたのである。辛うじてバットに当ててファウルにしたのだが、「もし、頭に当たっていたら」とドキッとさせられた。そのシーズンオフに、上原と食事に行く機会があったのだが、その時の上原とのやり取りが面白かった。 「万が一のことがあったら、子供の面倒を見てもらうからな」 スクイズの場面を振り返って冗談ぽく話したのだが、上原はこともなげにこう返した。「大丈夫ですよフォークやから」 ストレートよりスピードが出ないフォークだから、万が一頭に当たっても大丈夫だったというのである。緊迫した一瞬の場面でそこまでの判断をしていたのはもちろんすごいし、なりよりも年上の私に対してさらっと言ってのけるところが上原らしい。やっぱりいいピッチャーだなと感心したのである。 2013年に最多勝と最高勝率、新人王に輝いたヤクルトの小川泰弘にも「こいつは勝やろうな」と思った瞬間があった。開幕から先発ローテーションに入り、2,3勝した時のことである。夏場を前にした時期で「熱いのは得意なんか?」となんの気なしに聞いた。普通の新人なら「大丈夫です」「得意です」と答えるのだが、小川の場合は「すごく心配なんです」と答えてきた。 これは自己分析ができているなと思った。プロ一年目で経験がないことを分かっているのである。それが分かっていれば、最大限の準備をしようとする。年齢的にも若いし、夏場を乗り切れるだろうと思ったのである。 小川の場合は練習態度から違う。石川雅規などもそうだが、ウォーミングアップの段階から、何のための動きなのか考えながらやっているように感じる。左足を上げる独特の投球フォームでチェックポイントが多いというのもあうだろうが、キャッチボールから手を抜くことがない。プロでの経験こそ一年目だが、プロ意識を感じさせる選手だった。 若い選手から年賀状をもらうことも多いのだが、小川の場合は年賀状もしっかりしていた。「教えてもらったことを生かしてがんばります」と丁寧な字で書いてあった。 年賀状というのは、選手の性格が見えて面白い。二軍暮らしが続いている七條祐樹からの年賀状には「次のステージでの活躍を期待しています」と書いてあった。正月から「俺の心配している暇があったら、自分の心配をしろ」と笑ってしまった。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |