今夜中にこの雨もからっと上がって、 明日はきっと気持ちのいい日本晴れだ。 お互えにくよくよしねえで頑張りましょう。 第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』から 寅さんは一年のほとんどが旅の空です。神社やお祭りの祭礼で啖呵売することを生業としています。「テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降れば良い」という名せりふもありますが、天候に左右される仕事です。 ある雨の日、旅芝居を見ようと芝居小屋に入ったら、その悪天候のせいで、お客が一人も入らずに、やむなく、その日の芝居は中止したと、年老いた座長から聞きます。第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』の冒頭シーンです。 寅さんはこの後、しばしば旅先で再会することになる坂東鶴八郎一座と出会います。座長を演じたのは東映時代劇の悪役で知られたベテラン、吉田義夫さん。人生の大半を旅暮らしで過ごしてきたであろう、老座長にピッタリの風貌です。 事情を聞いた寅さん。お互い、お天道様に左右される「稼業はつらいやね」と、しみじみ互いの境遇を話し合います。「明日はきっと気持ちのいい日本晴れだ」と励まします。 「人生、晴れの日もあれば雨の日もある」。寅さんは若いときから、お天道様と一緒に生きてきました。つらいことがあっても、ひどい目にあっても、生きていて良かったと思うことがある。それを身をもって知っているから、こうした言葉が自然に出て来るのでしょう。 やがて、座長の娘・大空小百合(岡本茉利)が番傘を差して、宿まで寅さんを送ってくれます。そこで交わす何気ない会話。「お前さんはそのうちきっと立派な女優さんになるよ」。その優しさに感激した少女は「フーテンの寅先生」と、尊敬のまなざしを送ります。 気持ちが大きくなった寅さん「せめて座員の皆さんで一杯飲んでくれ」と財布からお札を出します。これが五百円のつもりだったのですが、間違えて五千円を渡してしまったので大失敗。それが笑いとなります。 そしてラストシーン。マドンナ・六波羅貴子(池内淳子)に失恋して、再び旅の人となった寅さんが、甲州路で一座と再会を果たします。画面奥には富士山。もちろん天気は「気持ちのいい日本晴れ」です。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |