家族がだんだんと少なくなりそんな心境もわかります。
子供の頃はいつも大勢でした。
今思えば不自由な生活でしたが幸せだったと思います。
(その時はなにも不自由とは思ってもいませんが)
夕食のときに、一日の楽しい出来事を語り合ったような記憶です。
両親と祖父がにこにこしながら私と兄の話を聞いてくれました。
父親と母親がいて、子供がいて、にぎやかに夕食を食べている。 これが、これが本当の、人間の生活というものじゃないかね、君。 第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』から 寅さんが旅先で体験してきたことや、人から聞いた話を、茶の間で一人語りするシーンがあります。 さくらを演じた倍賞千恵子さんによると「寅さんのアリア」と名づけられたこのシーンは、キャストやスタッフにとっても楽しみだったそうです。 映画は、回想や心象風景をも映像にして、観客に伝えてくれます。確かに映像は雄弁です。しかし「寅さんのアリア」は、寅さんのひとり語りだけで、寅さんの見聞きしたことや、感じたことまで伝えてくれるのです。山田洋次監督が「天賦の才」と語る渥美清さんの話芸と、それに託した山田監督の思いが、「男はつらいよ」シリーズを豊かなものにしてくれています。 第8作『寅次郎恋歌』で、博(前田吟)の母が亡くなります。その葬儀にやってきた寅さんは、博の父・飈一郎(志村喬)が一人では寂しかろうと、しばらく一緒に暮らします。 博の代わりに、親孝行をしようとする寅さんは「気持ちの人」です。その思いは十分あるのですが、すぐに暇を持て余してしまいます。飈一郎は、そんな寅さんと二人で過ごしながら、旅暮らしの寅さんの行く末を、それこそ息子を思うように心配するのです。 ある晩、飈一郎は寅さんに自分の体験を話します。 信州の安曇野を歩いているうちに、いつしか暗くなり、「ぽつんと一軒家の農家がたっているんだ。りんどうの花が庭いっぱい咲いていてね」。明かりのついた茶の間から、食事をする家族のにぎやかな声がしていた。それが「本当の人間の生活」ではないか、人間は絶対に一人では生きていけない、そこに早く気付いて欲しい、「わかるね」と寅さんに諭します。 寅さんは柴又に帰って茶の間で「庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間」と、さくらたちに、「りんどうの花」の暮らしを語ります。博に「君」と呼びかけるのがおかしいです。 まるで落語の名人芸のような渥美さんの語りの見事さ。受け売りではありますが、このことばに寅さんの後悔と反省、そして定住への憧れを感じるのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 博の父・飈一郎・ひょういちろう(ひょう)の字が化けています。 |