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俺はおめえ、リリーの夢を見てたのよ。 第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』から 浅丘ルリ子さんふんする放浪の歌姫・リリーの本名は松岡清子。その三度目の出演となった、第25作『寅次郎ハイビスカスの花』は、1980年の夏に公開されました、巡業に出かけた沖縄で倒れ入院したリリーのために、苦手な飛行機に乗って飛んでいった寅さん。その気持ちがうれしくて、最高の笑顔を見せるリリー。 第11作『寅次郎忘れな草』の網走での出会い。第15作『寅次郎相合い傘』での函館での再会。根無し草の二人は、お互いの悲しみを共有できる最高のパートナーです。さくらは二人が結ばれることを願い、ぼくたちフアンもいつか二人が「幸福な結末」を迎えるこを夢想していました。 『寅次郎ハイビスカスの花』で、二人は沖縄で一つ屋根の下で暮らします。夢のようなひとときです。寅さんはリリーを想い、リリーは寅さんを想っているのに、二人は派手なけんかをしてしまいます。 病気も良くなり、貯金も心もとないから、再び歌の仕事をするというリリーに、寅さんは「俺がなんとかしてやるよ」と男気を見せます。しかしリリーは「男に食わしてもらうなんて、私、まっぴら」と受け付けません。寅さんが「おまえと俺の仲じゃないか」と言うと、リリーは「あんたと私が夫婦だったら別よ」と、精いっぱいの気持ちを伝えます。 これはりりーの愛の告白なのですが、寅さんは照れて混ぜっ返してしまいます。女心が一つも分かっていないと、悲しい表情を見せるリリー。ここまでの男と女の微妙な感情は、これまで、描かれてなかっただけに、深く強烈な印象を残します。 本編のことばは第25作のラスト、群馬県のバス停で再会したリリーに向けた寅さんのせりふです。その前の茶の間のシーンで、御前様が「生きている間は夢だ」とシェークスピアのことばを引用します。おいちゃんや博は、寅さんがリリーに失恋し、それまでのことは「寅の夢」だったのではないかという会話です。 ぼくは、寅さんの「リリーの夢を見てたのよ」は、「恋の結末」ではなく、むしろ「これから」を夢想させてくれる、実に幸せなことばだと思うのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |