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よお、備後屋(びんごや)、相変わらずバカか? 『男はつらいよ』各作から 寅さんは柴又に帰ってくると、参道を歩く備後屋さんに「よぉ、相変わらずバカか」と声をかけます。いきなり相手にそんなことを言うのは失礼ですが、幼い頃よりお互いを知っている親しみと気安さからということは、よくわかります。 その備後屋さんを演じたのは、装飾・小道具スタッフである露木幸次さん。役者さんではありません。持ち前の明るいキャラクターで、現場を和ませてきた、名物スタッフの一人です。 露木さんが、二代目・備後屋を襲名したのは、シリーズ半ばのことです。それまで備後屋といえば、渥美清さんと同じ浅草芸人だった、ベテラン喜劇人の佐山俊二さんが演じていました。 山田洋次監督は、アチャラカと呼ばれた軽演劇出身の喜劇人をこよなく愛して、佐山俊二さんをしばしば起用してきました。「寅さん」以前も、佐山さんは『九ちゃんのでっかい夢』(1967年)での珍妙な殺し屋役や、『吹けば飛ぶよな男だが』(68年)の涙もろい拘置所の看守役など、山田作品に出演してきました。 第4作『新 男はつらいよ』で財津一郎さんが演じた「ハワイ騒動」の泥棒役も、テレビ版「男はつらいよ」では佐山俊二さんでした。その泥棒、捕まえてみたら寅さんの昔なじみの久(きゅう)さんという人で、久さんは、そのままレギュラーになりました。 そして第9作『柴又慕情』では、家族とけんかして貸し間暮らしをしようと不動産屋を訪ねた寅さんを、とらやに案内してしまう周旋業者など、シリーズではさまざまな役を演じていました。 なかでも、第21作『寅次郎わが道をゆく』での備後屋役が白眉(はくび)です。「相変わらずバカか」と寅さんに言われたときの、悔しがるリアクションは絶品です。その後、改悛(かいしゅん)した寅さんが、店の手伝いをしている場面では「あ、備後屋さん、いつもお利口そうですね」と、しおらしい寅さんに拍子抜けする備後屋の表情。これぞ喜劇人の味です。 その佐山さんが84年に亡くなり、露木さんが二代目にふさわしく寅さんとのおかしなやりとりでフアンを楽しませてくれました。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |