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じゃ、また夢の続きを見るとするか。 第41作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』から 第25作『寅次郎ハイビスカスの花』のクライマックスで、寅さんは、リリー(浅丘ルリ子)に「俺と所帯を持つか」といいます。その気持ちをうれしく思いながらも、受け止めかねたリリーは「私たち、夢見てたのよ、きっと。ほら、あんまり暑いからさ」といい、寅さんは「そうだよ、夢だ、夢だ」とがっかりします。 これを失恋とするかはともかく、二人はまた旅の人となります。山田洋次監督が素晴らしいのは、ラストで二人を再会させて幸福なエンディングを用意してくれたことです。「何してんのさ」というリリーに、寅さんが「リリーの夢を見てたのよ」と答えます。思い出すだけでも、幸福な気分になれます。 二人の再会を知る由もない、とらやの人々は、寅さんとリリーの恋について、御前様に話します。さくらの「夢から覚めたからって、幸せとは限らないもんね、お兄ちゃんは」のことばには、寅さんへの優しさがあふれています。 第41作『寅次郎心の旅路』でも、「寅さんと夢」についての談義が、さくらと御前様の間で交わされます。 寅さんのウイーン土産の人形を受け取って、目を細める御前様に、さくらは、寅さんがウイーンに行ったことは嘘で「夢でも見てたんじゃないかしらって」と話します。 そこで御前様は「もともと寅の人生そのものが夢みたいなもんですから」としみじみ言います。「寅さんの人生そのものが夢」。これは名言だと思います。 さくらは「だとしたら、いつ覚めてくれるんでしょうね」とほほ笑みます。かつて夢から覚めても幸せとは限らない、と言ったさくらですが、どちらも、兄を想う妹の本音です。 その話を聞いた寅さんは、すっと立ち上がり「じゃ、また夢の続きを見るとするか」と旅の支度をします。 ウイーンで寅さんは現地ガイドの久美子(竹下景子)と楽しい日々を過ごしますが、例によって三枚目となりました。マドンナとの恋も、寅さんにしてみれば「うたかたの夢」。その寅さんの「夢の人生」こそが「男はつらいよ」全48作であり、ぼくたちも夢を見続けることができるのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |