苦労したんだなぁ、本当に皆さんご苦労様でした。 第48作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』から 最終作となった第48作『寅次郎紅の花』のラストで、寅さんは神戸市長田区の被災地を訪ねます。寅さんはこの地で、阪神淡路大震災に逢い、そのままボランティア活動をしていたのです。それから11カ月後のお正月、寅さんが「菅原市場 復興祭」へやって来たのです。 『寅次郎紅の花』では、寅さんとリリー(浅丘ルリ子)は奄美群島の加計呂麻島(かけろまじま)で楽しい日々を過ごし、二人そろって柴又のくるまやに帰ってきます。ちょっとしたことで二人はけんかをして、リリーが帰る時間が近づきます。 いつもなら、ここで別れとなるのですが、寅さんは「か弱い女を一人寂しく、旅立たせるわけにもいかないだろ」とタクシーに同乗します。「男が女を送るって場合にはな、その女の家(うち)の玄関まで送るってことよ」。ついに寅さんが愛の告白をしたのです。 寅さんは柴又を出て、リリーとともに加計呂麻島を終(つい)のすみかとする決意をしたともとれる、幸福な場面です。「男はつらいよ」の大団円にふさわしい展開は、何度見ても胸が熱くなります。 その後、リリーからの年賀状で、リリーと口げんかした寅さんが出ていったことが明らかになります。ぼくの解釈では、けんかはきっかけにすぎず、寅さんにはどうしても行かねばならない場所があったのです。それが神戸市長田区だったのです。 「出会った人の幸せを願う」のが寅さんです。寅さんはそこで旧知の人々と再会して「苦労したんだなぁ、本当に皆さんご苦労様でした」と声をかけます。これが最後の「寅さんのことば」となりました。 これは第1作で20年ぶりに再会したさくらへの「苦労かけたなぁ、ご苦労さん」ということばと同じです。こういうときの「ご苦労さん」は渥美清さんにある感覚だと山田洋次監督からうかがいました。「男はつらいよ」全48作には、数えきれないほどの寅さんの「ご苦労さん」がありました。 第48作の「ご苦労様」には、シリーズを支持してきたフアンへの、そして車寅次郎から渥美清さん自身への「本当にご苦労さまでした」という思いが込められているような気がします。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 これで「おわり」です。読んでくれた方「本当にご苦労さまでした、ありがとうございました」。明日から宮本慎也著「意識力」を写します。自分の為ですが見てくれる方がいると思うとうれしいです。 |