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第四章 攻める意識 打撃は下半身と利き手 スイングをつくりあげるには、試行錯誤を繰り返すしかない。選手によって長所、短所はさまざまだが、私の場合はなかなか手が動かないという欠点があった。 バットを構えてタイミングをとり、打ちに行く時のグリップの位置を「トップ」というのだが、このトップをつくった時に、自分が意識しているよりもグリップの位置が捕手側に動いていない。 だから、素振りやティー打撃でもわざと大きくトップをつくってから振るように心がけていた。身体にトップの位置はここだよ、と覚え込ませるわけだ。投手と対戦する試合のなかでは、自分のフォームを確認している時間的な余裕は少ない。練習では意識的にトップの位置を大きくつくることで、無意識な状況でもトップの位置が大きくとれるように身体に覚え込ませるわけだ。 トップの位置は、できるだけ捕手側に大きく引きたい。自分の背後にひねってしまうのはよくないのだが、弓矢と同じで、弦を目の前の位置で引くか、肩の位置まで大きく引くかで、矢への力の伝わり方は変わってくるからだ。大きく引いたほうが、強いスイングができるのはいうまでもない。 守備と同様、バッティングの土台となるのは下半身である。下半身が安定して初めて、どっしりとしたトップの形をつくれる。 それでは、下半身を使うというにはどういうことか。私は両方の親指から始まってふくらはぎ、太ももと、すべて内側の筋肉を使う意識を大事にしていた。両足の親指でぐっと地面を掴み、その力が身体の中心に向かって上がってくるイメージである。 スイングの際も同じである。左足のステップは真っ直ぐに地面に下すのではなく、斜めに下した方が内側の筋肉を使いやすい。スイングする際にも、下半身を内側に挟み込むイメージで、力が外側に逃げないようにしていた。 「バットとボールを最短距離で当てろ」 アマチュア指導者がよく使う表現だが、私は最短距離を意識することはしなかった。最短距離を意識してしまうと、ボールをバットで上から切ってしまい、ポップフライが多くなってしまう。 また、ボールを上から打て、上から叩けというと、バットとボールがインパクトするポイントが「点」でしかなくなってしまう。ボールは地面と水平に近い角度で来ているのだから、横からレベルでスイングすれば、ポイントが「面」になる。最短距離で当てろ、上から打て、という指導は誤解を生みやすい。 バッティングには、「利き手」が関係している。投打には右投げ右打ち、右投げ左打ち、左投げ右打ち、左投げ左打ちの四パターンがあるが、利き手を生かせなければ、いい打撃はできない。 外からどう見えていたかは分からないが、右利きの私は右手でボールをつかまえて打つ感覚でスイングしていた。右打者の右手(左打者の左手)、つまり後ろの手で打つタイプは、基本的に高めのボールに強い。 一方で右打者の左手(左打者の右手)、つまり投手側の前の手で打つタイプは対照的に低めのボールに強い。坂本勇人(巨人)前の手で打つタイプの典型で、低めのボールをうまくさばくことが多い。体勢を崩しながらも、左手一本で低めのボールを拾ってホームランにする。そんなシーンを思い出す方も多いだろう。坂本は私生活では左利きなので、左手で打つ感覚が優れているのだ。 私生活での利き手が、そのままバッティングの利き手になるわけではない。一方でどちらにも当てはまらないタイプの選手もいた。全盛期の小笠原道太(中日)は右手も使えて、左手も使える印象があった。どちらの手を上手に使えるかは、天性の感覚による部分が大きいのではないだろうか。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |