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うん、あぶくだよ、 それも上等なあぶくじゃねえやな、 風呂の中でコイた屁じゃないけども背中のほうへ回ってパチンだい。 第11作『寅次郎忘れな草』から 寅さんは、自分のことを根なし草だとわきまえています。気ままに旅の暮らしをしながらも、どこかに腰を落ち着けたい。博とさくら夫婦、おいちゃんとおばちゃん夫婦のように、いつか幸せな家庭を持ちたいという想いを抱いているに違いありません。 夜汽車の窓から、遠くポツン、ポツンと過ぎ去ってゆく家々の灯りを眺めていると、そこには温かい家庭があり、人々の暮らしがある。寅さんは、そんな普通の暮らしに憧れています。 さて第11作『寅次郎忘れな草』で、網走に向かう夜汽車の中で一人涙を流している女性に、寅さんは自分と同じ孤独を感じます。 その翌日、中古レコードを商う寅さんに「さっぱり売れないじゃないか」と声をかけてきたのは、夜汽車の女性でした。これが放浪の歌手リリー(浅丘ルリ子)との出会いとなります。 網走橋近くの船着き場を歩くリリーが、少しよろけそうになると、そっと寅さんが手を差し伸べて支えます。こうしたさりげないしぐさが深い印象を残します。 同じ根無し草の二人は、ひとときの会話で心を通わせます。リリーは「私たちみたいな生活ってさ、普通の人とは違うのよね」とつぶやきます、彼女もまた孤独の旅人です。「それもいいほうに違うんじゃなくて何て言うのかな、あってもなくてもどうでもいいみたいな、つまりさ、あぶくみたいなもんだね」と自嘲気味なリリー その気持ちを受けて、寅さんが答えるのがこのことばです。自分たちを「あぶく」に例えるリリーの、これまでの人生や、哀しかったこと、寂しかったであろうことなど、さまざまなことを思い、共感しての寅さん流のことばなのです 浅丘ルリ子さんはここで涙を浮かべます。この瞬間、彼女がどんな女性なのか、観客は寅さんと同じ気持ちになるのだと思います。 この物語は、それまでの「一目ぼれ」や「片思い」とは違う「大人の恋」が展開していきます。ぼくたちは、同じ気持ちを共有している二人に、幸せになってほしいと思いながらスクリーンを見つめるのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |