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勉強したやつは、自分の頭でキチンと筋道をたてて、 はて、こういう時はどうしたらいいかなと、 考えることができるんだ。 第40作『男はつらい 寅次郎サラダ記念日』から 第27作『浪花の恋の寅次郎』から、吉岡秀隆さんが満男役を演じてきました。「変わらない」シリーズのなかで、小学生から高校生になってゆく満男の成長が描かれてきました。同時に、子役から立派な俳優へと成長していく、吉岡さんの姿を、観客は見つめてきたことにもなります。 第39作『寅次郎物語』で、満男は寅さんに「人間は何のために生きているのかな?」と前作(176ページ=76)でも紹介しましたが、寅さんは「生まれてきて良かったなぁ」と感じる瞬間のために生きていると、明快に答えてくれます。 第40作『寅次郎サラダ記念日』では、その満男が、高校三年生となり、大学受験を目前に控えています。あるとき、寅さんに再び問います。「何のために勉強するのかな?」と。 そいいえば同じ質問を寅さんがマドンナにしたことがあります。第16作『寅次郎立志篇』で、寅さんは東大考古学教室に勤める、筧礼子(樫山文枝)に「何のために勉強しているんだい」と尋ね、答えに窮する彼女に「己を知るためよ」と明快に答えたことがあります。 これも名言ですが、高校生の満男には「己を知る」というような表現では難しすぎます。というより、寅さんもこの「己を知る」は、受け売りだったので、忘れてしまっていたかもしれません。 江戸川の土手にゴロンとしながら寅さんはこう言います。「人間、長い間、生きてりゃいろんなことにぶつかるだろう。な、そんな時に俺みてえに勉強していないやつは、この振ったサイコロの目で決めるとか、その時の気分で決めるよりしょうがない」。風の吹くまま、気の向くまま、自由に生きてきた寅さんの自戒の念が込められています。 筋道をたてて物事を考えることができたら良いのに、というのは、満男の父である博と付き合っていて、寅さんが実感したことかもしれません。でも満男の質問に寅さんは「はて、こういうときはどうしたらいいかな」と筋道をたてて考えて答えていると思います。ちゃんと「己を知って」満男に接しているのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |